能忍寺の天竺菩提樹について

能忍寺で育っているインド菩提樹は、スリランカのスリーマハー菩提樹精舎から前田行貴先生が種子を拝受し日本で発芽させて鉢植えで育てられた苗木を横浜市の池内正人氏に寄贈され、その後池内氏から譲り受けた横浜市の板倉信夫が鉢植えで大切に育て上げてきたものです。成長した木からは挿し木により本数を増やしていきました。お釈迦様当時の直系の聖樹から数えて孫の世代といえます。

このうち3鉢を2017年春(だったと思います)に、能忍寺の山口先生に寄進させていただきました。その時の樹高は1.5mくらいだったでしょうか。その後、山口先生が鉢から出して露地植えを試みられ、見事に根付いて大変な高木に育ちました。降霜に弱い植物なので日本では温室栽培しか出来ないと言われていましたが、館山のこの地は暖かくまた特殊なパワーがあることを感じ取りました。こうしてお釈迦様に所縁のインド菩提樹にとって能忍寺が安住の地として定まることになりました。

これから能忍寺のこの地で、菩提樹がさらに大樹となって緑美しく豊かに繁茂して、瞑想するのにふさわしい心のやすらぎの場となる菩提樹の森が誕生することを心から願い楽しみにしております。

2023年(令和5年)10月8日
板倉幸彦

天竺菩提樹はインドボダイジュともいわれ、サンスクリット語でPIPPALA(ピッパラ)です。
インド原産のクワ科の熱帯植物で葉は三角状広卵型にして長い柄があり、先端は長く尾状に尖って独特の優雅さを呈しています。この果実はイチジクに似て小さく直径1センチ程度です。
2,550年前(紀元前528年頃)、お釈迦様は5年間難行苦行の果てに、一週間の断食瞑想の暁に、インドのブッダガヤの菩提樹の下で菩提に達しました。
それ以来、天竺菩提樹は偉大なる悟りを得られた仏陀のシンボルとして、また禅定三昧・瞑想に導く強いプラーナを発する神聖な樹木として尊崇されてきました。
その当時の木は6世紀初めの兵火に遭って今はありませんが、紀元前246年にその実生(稚苗)を植樹して祀られた直系の聖木がスリランカの古都アヌラーダプラのスリーマハー菩提樹精舎に樹齢2,300年の命脈を保っています。

元日印教育協会総裁/前田行貴先生著「インドへの道 佛跡巡禧」等より抜粋