故 横山紘一先生による自然葬推進の理由

立教大学名誉教授 故 横山紘一 

自然の理に遵う

人間は自然から生まれ、自然に生かされ、自然の中に死んでいきます。植物も動物も同じです。春の緑の新緑も秋には枯葉となって落ちます。しかしそれは又新しい芽を吹く大地の栄養となります。
このように命あるものは循環の円の中に、地球大の、宇宙大の循環の円の中に生まれ死に、そしてまた生まれ死んでいきます。
死後この身を自然に返す、これは自然の理に遵った埋葬方法です。

感謝の念に基づく

私たちは静かに反省すると【私たちはいかに多くの動植物のお陰で生きてきたことか】という思いに駆られます。
この世に生を受けてからこのかた、私たちが摂取した動植物の量はいかがでしょうか。
人間も動物だからそれは仕方ないと割り切ることができるでしょうか。思えば思うほど、魚や鳥などの動物への、大根や白菜などの野菜への感謝の念がますます強まってきます。
新たな動植物の誕生のためにこの身を海や山に返す、これは動植物への感謝の念に基づく埋葬方法です。

仏教本来の埋葬

仏教はインドにおいて釈尊によって興されました。
そのインドでは遺体を灰にして河川に流すというのが埋葬の一般的な方法です。
釈尊も自分の死後その方法をとるようにと弟子に言い残しました。
(しかし、釈尊の偉大さのため、その遺灰はインドの八か所に分散されてまつられました)
釈尊以来、仏教の本来の埋葬は、遺灰を自然に返すという方法であったのです。

故 横山紘一先生の略歴

1940年、福岡県生まれ。東京大学農学部水産学科、同文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院印度哲学博士課程修了。立教大学名誉教授、
1997年11月、興福寺で得度、法名は一如。
鹿島神流師範、唯識塾(本山は不老山能忍寺)塾長。
菩薩会(本山は不老山能忍寺)会長
専攻は唯識思想。
2017年4月から半年間、NHKテレビ「こころの時代」に講師として出演。著書に『唯識思想入門』『唯識の哲学』『仏教思想へのいざない』『唯識とは何か』『十牛図の世界』『わが心の構造』『「唯識」という生き方』『唯識入門講座』『唯識仏教辞典』『阿頼耶識の発見』ほか多数。